
ゲルダ・ベングトソン
GERDA BENGTSSON
ゲルダ・ベングトソンはデンマーク手工芸ギルドで働いていた1947年、47歳のときに「グースベリーのクッション」という傑作を生み出します。以降数万とも言われるデザインを創出し、20世紀のデンマーク刺繍を世界的なものにしました。
自然の本質を捉える野の草花や樹ばかりでなく、庭や公園でくつろぐ人々のスナップを最小のステッチでユーモアをこめて表現する作家としても高く評価されています。
画家を志して
ゲルダ・ベングトソンは1900年に生まれ、15歳のときに画家を志して工芸学校に入学します。そこで3年間勉強し、厳しい試験をパスした彼女は芸術アカデミー(アカデミー・オブ・アーツ)に入学します。このとき同期には、近代建築の先達として才能を発揮したアルネ・ヤコブセンなどがいました。
芸術アカデミーの最終学年で装飾美術を専攻した彼女は、タペストリー織りの授業を受けた縁で、卒業後その授業を担当したアストリッド・ホルムの工房で助手を務めます。アストリッド・ホルムの教え子にはフィンランドから来ていたエッシ・クリンゲンダルがいました。彼女の父親はフィンランドで最大の繊維会社の社長でしたが、ゲルダが自分の娘と同居をするという条件で、ゲルダのパリでの修行にかかる費用の負担を申し出ます。
ゴブラン織りを習ったり、絵の才能を認められ古いタペストリーをコピーしたり、下絵描きの仕事を頼まれるなど、パリでの8ヶ月間はゲルダにとって意義深い時間でした。特に17世紀のタペストリー「Le dame a licorne」(クリューニ美術館にあるタペストリーの傑作)の模写の仕事は彼女に大きな影響を与えます。
「(そこに織り込まれた)草花の一つひとつが芸術でした。不規則で、しかもバランスが取れており、繊細な線と、魅惑的な色彩をもっていました」と、後に彼女は述べています。
1927年、ゲルダはフィンランドで5ヶ月を過ごします。その間エッシ・クリンゲンダルからフィンランド独特のラグ織りを習い、国立博物館の古いラグの複製を作るために必要な糸の天然染めの仕事に熱中したりしました。
刺繍との出会い
1928年、デンマーク手工芸ギルドが設立され、1929年のギルドの展示会にゲルダはクリューニ美術館での水彩によるスケッチの提出を求められました。そのとき、彼女にとって最初のクロスステッチのパターンの注文がなされます。これが今でも愛されている、キャンバス刺繍でウサギをモチーフとしたものでした。
またすぐに最初の野生の草花をデザインしましたが、このころギルドのワンデル会長から、麻布に木綿の刺繍糸で刺繍するパターンを作っては、という示唆があったようです。はたしてその結果は、ゲルダ・ベングトソンをして、その仕事をぜひ続けたいと思わせるものでした。しかし、彼女は昼間、織物工房でラグの製作をしていたので、刺繍のデザインは思うようにはかどりませんでした。ラグの製作の仕事は、注文が多かったにもかかわらず、あまりお金にならなかったため、その工房を閉めようと考えていたとき、ギルドのワンゲル会長からギルドの刺繍クラスで絵を教えてくれるよう、要請がきたのです。
1940年、ゲルダ・ベングトソンはギルドの刺繍の工房で働くことになります。彼女は後に、「この工房こそ、私が求めていた働き場所であると思いました」と語っています。
以降、彼女は35年以上にわたり勤めることになるのですが、この頃彼女は「その場所で働くことが私を幸せにし、私を成長させ、またそこで新しいものに挑戦できる、それが今の私の職場です」と語っています。こうした謙虚な感謝の気持ちが、ゲルダ・ベングトソンの作品には素直に表現されています。それもまた彼女のデザインが人々に広く愛される理由だと思われます。
ゲルダ・ベングトソンのしごと
ゲルダ・ベングトソンの作品は、どんな細かい部分もおろそかにされていません。たとえば、ひとつの作品を作る場合、水彩によるスケッチから、方眼紙に線描し、それをます目に沿ったクロスステッチ用のギザギザの線に写し、色付けをし、色糸を決めるまで、丁寧なきめの細かい仕事がなされています。その作業工程で彼女は、決して手間を省くようなことはしません。
この作業の過程では、リズミカルな線と、部分と色のバランスが崩れないように細心の注意が払われています。そして何よりも、あたたかく澄み渡ったまなざしで、花や草や、木の生命の美しさを愛でています。
デンマーク手工芸ギルドについて
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